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2026.6.22

境界を超える学びと対話

学校長日記
境界を超える学びと対話

2025年の新語・流行語大賞は、高市早苗首相の言葉「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」が年間大賞に選ばれました。 日本初の女性首相となった高市氏が、強い覚悟を示す言葉として評価される一方、長時間労働を美徳とする価値観を助長しかねないとの批判も呼びました。この論争は「労働」と「余暇」を明確に分ける考え方を前提に、どちらを優先すべきかという視点から展開されたものです。

そこで紹介したいのが「プレイワーク」という概念です。 これは仕事と遊びの境界が曖昧になり、どちらをしているのか分からないような状況を指します。 仕事のプロセスを楽しみ、遊びのように取り組むことで生産性や創造性を高めるという考え方です。 仕事は単なる労働ではなく「自分がやりたいこと」「社会に提供したい価値」と結びつき、遊びと仕事が融合することで自己表現や自己実現につながります。 例えば教師という職業は、勤務時間外にも授業の構想を考えることがあったりと、まさにプレイワーク的な働き方だと言えるでしょう。 私はこの特性を前向きに捉え、生徒の皆さんにも「プレイワーク」という考え方を知ってほしいと思っています。

さて、私自身の2025年度流行語大賞を発表します。 それは「対話の精神」です。 この一年、なぜか私の耳と目から頭の中に「対話」というキーワードが飛び込んできたのです。 まずは、本校在校生の保護者であり、刑務所や更生施設で「再犯防止」「更生支援」をテーマに講演を行う緒方伸子さんとお話をしました。 緒方さんは、対話とは対等な関係であり、問題解決を前提とせず、互いに考えを深める営みであると語ります。 自分をさらけ出し、他者とのやり取りを通じて自分自身の考えや感情に気づき、変化していく―対話は「人が変わるためのプロセス」であり、自己理解を深めるための重要な手段だと強調されました。

昨夏には東京のかえつ有明中学校を訪問し、先生方のワークショップに参加しました。そこで学んだ「対話の基礎力」とは、発言の根拠を自分の内面から俯瞰し、思い込みや誤認ではないかを確認すること、異なる価値観の相手との対話を新しい発見や喜びの機会と捉えること、そして相手への敬意を忘れずに相手の背景を理解しようと努めるということでした。

さらに、カトリックの世界でもレオ14世が「誰も自分の考えを押し付けてはならない。すべての人は互いに耳を傾け合わなければならない」と述べたように、近年は「対話と傾聴」に重きを置く考え方が広がっています。

そして明星学園では130周年を控え、建学の精神を踏まえた教育目標を再確認し、新たな言語化を試みました。 その成果として「明星トライアングルと9つの力」を策定し、その教育土壌として「倫理観」「多様な学び」と並び「対話の精神」を掲げています。

このように、この一年、私の歩みの中で「対話」というキーワードは繰り返し登場し、常に頭の中を巡り続けてきのです。 「働くこと」と「遊ぶこと」の境界を越えるプレイワークの発想、そして人と人との関係を深める「対話の精神」。この二つは、未来の社会や教育において欠かせない要素だと感じます。 仕事を楽しみ、遊びのように創造する姿勢と、互いに耳を傾け合い、自己理解を深める対話の力。 この両輪が組織や個人の成長を支え、より豊かな社会を築く基盤となるのかもしれません。

生徒は「学ぶこと」と「遊ぶこと」の間に境界を設けず、先生は「働くこと」と「遊ぶこと」の垣根を越える。そして、さらに「先生」と「生徒」という立場の違いを超えて、真の対話が生まれる。

明星学園は、そんな学園でありたいと願っています。