2026.3.24
「約束」を問い直す ―― 鏡としての生徒たち
2025年度の始まりにあたり、私は全校生徒の前である「約束」を掲げました。それは、私たち教職員が「こうならないように意識する」という戒めのリストです。
先生方から生徒の皆さんへ ~こうならないように意識します~
①マイナス面に対する注意・指導の回数が (ほめることに比べて)非常に多い
②指導基準に一貫性がない (一貫性がないように生徒から見える)
③生徒を信頼しない(子ども扱いする)発言が多い
④生徒を見下す、バカにする
⑤生徒との約束を忘れる(守らない・安易に約束する)
⑥責任を認めない (失敗したことをごまかす)
⑦生徒が大切にしているものを侮辱する
⑧表情がくらい(楽しそうでない)
さらに「皆さんへの約束」として三つの指針を明示しました。
①挨拶・笑顔・ありがとうを忘れない
②良いことを良いと言う、ダメなことをダメと言う
③自分がしてほしいことを相手にする。(話を聞く・任せてみる)
言葉にすれば、どれも当たり前のことかもしれません。しかし、この当たり前を徹底することこそが、教育現場において最も困難で、かつ最も重要であると私は考えています。 一年を振り返り、自問自答します。 私たちは、生徒を信頼せず、子ども扱いするような発言をしていなかったでしょうか。指導に一貫性を欠き、皆さんに不信感を抱かせることはなかったでしょうか。責任を認めず、失敗をごまかすような大人の姿を見せてはいなかったでしょうか。 もし、私たちの表情が暗く、楽しそうに過ごしていなかったとしたら、それは「夢を持たせるコミュニケーション」という約束から最も遠い場所にいたことになります。 生徒は、教師の言葉以上に、その「後ろ姿」を鋭く見ています。私たちが「ダメなことはダメだ」と毅然と言うためには、私たち自身が「良いこと良いと言う」素直さと、生徒が大切にしているものを尊重する謙虚さを持ち合わせていなければなりません。 この約束は、一年限りのパフォーマンスではありません。掲げた以上、私たちは常に皆さんの視線という「鏡」に照らされ続けます。約束を守れたかどうかを判断するのは、教壇に立つ私たちではなく、目の前にいる生徒の皆さん自身です。 できていたことは継続し、できなかったことは素直に認め、正していく。この年度末、私たちは再びあのスライドを見つめ直しています。皆さん一人ひとりが、一人の人間として尊重される学校であるために。先生たちは、これからもこの「約束」と真剣に向き合い続けます。
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さて、こうした「問い」を持ち続ける姿勢は、卒業を迎える高校三年生の皆さんが本校で培った「学び」の精神そのものでもあります。 「それぞれの学年に色がある」と言われますが、皆さんの色は「未知を愉しむ、飽くなき探究の色」でした。社会の難問に挑んだプロジェクト、ラー二ングセンターでの静かな闘志、クラブ活動に捧げた情熱。その形は違えど、正解のない問いに没頭したプロセスは、皆さんの魂に深い強さを刻み込みました。 男子校という環境で切磋琢磨した皆さんは、もはや単なるクラスメイトではなく、同じ問いを追い、志を共にした一生の友です。これから踏み出す世界は正解のない問いに満ちていますが、自ら問い、自ら動く醍醐味を知った皆さんなら、自ら正解を創り出していけるはずです。 自分の内なる「問い」をコンパスに、胸を張って進んでください。 卒業おめでとう。君たちの前途に幸多からんことを。
