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2025.3.26

君は社会を変える人になれる~卒業生へ贈る言葉~

学校長日記
君は社会を変える人になれる~卒業生へ贈る言葉~

第124回生280名のみなさん、卒業おめでとうございます。この晴れやかな日に、皆さんの成長と成果を称えるとともに、これからの人生に向けて大切なメッセージをお伝えしたいと思います。

現在、日本そして世界は、かつてないほどの分断に直面しています。政治的な対立、経済格差、文化の衝突など、様々な要因が人々の間に溝を作り出しています。2025年1月20日のドナルド・トランプ氏の大統領就任は、アメリカ社会の深刻な分断を象徴しています。トランプ氏の2度目の就任演説では「団結」がテーマでしたが、専門家は分断がさらに深まる可能性を指摘しています。 韓国の政治的分断は、2024年12月の尹錫悦大統領による戒厳令宣言とその撤回という劇的な出来事で顕在化しました。この事態は、保守派と進歩派の対立、世代間の価値観の相違、そして男女間の政治的見解の差異など、韓国社会に存在する多層的な分断を反映しています。 イスラエルとパレスチナの対立、ロシアとウクライナの戦争も依然として終結への出口は見えません。

また国内に目を向けても、所得格差の拡大により、富裕層と貧困層の間で相互理解が困難になってきています。 高齢者と若者の間にも分断が生じています。情報環境の変化により、メディア接触のパターンによる分断も生じています。特にSNSを中心に情報を得る層と、従来のマスメディアを主に利用する層の間で、対立が起こっています。  

しかし、私は日本そして世界の未来に対して悲観していません。むしろ楽観視しています。それは皆さんがいるからです。皆さんの世代は、デジタルネイティブとして生まれ育ったZ世代と言われています。皆さんに中にはご自身を「Z世代」と一括りでまとめられることに抵抗を感じている人もいるかもしれません。しかし、私はZ世代の皆さんに大いなる可能性を感じています。Z世代の若者は多様性を重視し、個々の価値観を尊重する傾向が強いと言われています。自分らしさを大切にすると同時に、他者の個性も受け入れる姿勢を持っており、サステナビリティやSDGsなど、環境問題や社会課題に対する関心が高いのもZ世代の特徴です。テクノロジーを駆使し、グローバルな視点を持ち、社会課題に対する高い意識を持つ皆さんは、従来の世代とは異なる価値観や行動様式を持っており、社会や職場において新しい視点をもたらす可能性を秘めています。  

そしてそんな皆さんに対して、本校では、このような時代だからこそ、創立以来変わることなく思いやりと行動力を持った青年の育成に力を注いできました。皆さんには、「困難な状況にある人々にさりげなく手を差し伸べることができる人になってほしい」という願いを込めて、日々の教育活動を行ってきました。カトリックの精神に基づき、他者への愛と奉仕の心を育むことが、私たちの使命でした。本日、本校を卒業する皆さんは、そんなクリスチャンセンスを身に着けた立派な明星紳士です。 本校で自然に身に付いた価値観と、皆さんの世代の固有の特性を組み合わせることで、きっと素晴らしい変化を社会にもたらすことができます。

私は心から信じています。皆さんが本校の教育方針を実践し、分断を乗り越え、より良い社会を作り上げていくことを。皆さんの一人一人が、困っている人に寄り添い、共感し、行動を起こすことで、世界は少しずつ、しかし確実に変わっていくのです。

最初は、大きなこと、手の届かないところに目を向ける必要はありません。自分の手の届く身近な範囲の社会をよりよく変えていきましょう。例えば、毎朝、自宅前の道を掃除しているおばあさんがいます。このおばあさんは、無意識かもしれません。でも、おばあさんの行いは半径5メートル以内の社会をよりよくしようというすばらしい行動です。そういうところから、社会を今より少しよりよく変えてください。皆さんならできます。私はそう信じています。  

卒業生の皆さん、これからの人生で様々な困難に直面することもあるでしょう。しかし、本校で学んだことを胸に、自信を持って前に進んでください。皆さんの中にある思いやりの心と、行動力が、必ず道を開いてくれるはずです。

最後に、皆さんの新たな旅立ちを心からお祝いするとともに、皆さんの未来が希望に満ちたものであることを祈念いたします。 卒業おめでとう。