
好きなことはとことん貫いてください
1987年度卒業
森滝 丈也
MORITAKI TAKEYA
私は現在、三重県にある鳥羽水族館で飼育員、学芸員として働いています。
鳥羽水族館と聞けば、ラッコやジュゴンなどの人気の海獣類を思い浮かべる方も多いかと思いますが、これまでに私が担当してきた生物は、もう少しマイナーなオウムガイやダイオウグソクムシなど、いわゆる無脊椎動物と呼ばれる生きものばかり。個人的には哺乳類よりもこちらの方に興味があります。
鳥羽水族館では、ここ10年ほど三重県の熊野灘で操業する沖合底引き網漁船を使って、水深300mあたりに生息する深海生物の収集や調査に力を入れて取り組んでいます。水深300mあたりで採集される生物にはまだ名前がついていない未記載種も多く、そんな生物を見つけると研究者に標本提供して、共同で新種記載をおこなうこともあります。これまでに熊野灘で採集した生物から40種が新種記載されましたが、その中には学名に私の名がついたものが2種います(Sandythoa moritakii とDicyemennea moritakii )。それぞれどんな生きものか、興味のある方は検索してみてください。飼育を通じて彼らの不思議な姿や謎に満ちた生態を明らかにできたときは飼育員冥利に尽きます。今、彼らの魅力を皆さんに伝えることにやりがいを感じています。
高校生の頃の私は、特に目立つこともない普通の学生だったと思いますが、そのころから生物の教科は好きでした。高校3年時の担任が生物担当だったこともあり、色々と懇意にしていただいたことを憶えています。
就職してからは連絡を取る機会がほとんどなくなっていましたが、5年ほど前に私のことが新聞に取り上げられた際、朝から突然、何十年かぶりに先生から電話が掛かってきて驚きました。新聞記事の名前と年齢を見て私だと確信したそうです。先生から「素晴らしいなぁ」「僕は、高校生のころから君は大成すると思っていた」「教育実習に来た時、成績表に満点を付けたのを覚えているか」などなど、高すぎる評価でしたが、久しぶりに電話口で聞く先生の声に驚くと同時に非常に嬉しくなりました。
私の例を出すまでもなく、明星は生徒のことを想ってくださる先生が多いように感じます。大学に進学後に手紙のやりとりを通じて何度も悩みの相談に乗ってくださった先生もいました。先生方だけではなく多くの時間を共に過ごす友達の関係も長く続きます。この繋がりはこれから先の人生においてきっと皆さんの支えになります。是非、貴重な中学高校時代にしっかりとした人間関係を築いてください。そして好きなことはとことん貫いてください。