
これまで初代校長のウォルフ先生(明星の創立者)から、17代にわたって引き継がれてきた創立の精神は、百有余年間途切れることなく思い起こされてきました。私も創立の精神を常に思い起こしながら、未来へと第一歩を踏み出したいと思います。明星は今年、創立111年目をスタートしました。大阪の地にあって、カトリック・ミッション・スクールとしては信愛女学院の125年に続く、男子校では一番の古参となっています。1898年9月にウォルフ先生、レーベル先生、ランバック先生(長崎海星から合流)の3名のマリア会修道士たちが、西区江戸堀に病院跡の建物を借りて、たった13名の生徒を指導したのが、「明星学校」の始まりです。
英語・仏語・独語を中心に語学学校として、9月27日から授業が始まっています。ウォルフ・レーベル両先生は6月に来日したばかりです。右も左もわからない西欧人が、どういう風にして授業を始めたか、想像するだけでハラハラします。明治も30年経って、近代化も進んだとはいえ、日本語も解らないフランス人が何をしたのでしょうか。故国フランスにあっては、教師の経験は豊富だったと思います。しかし単に語学だけの教師ではなかったのです。宣教師(マリア会修道士)としての熱誠に燃え、イエス・キリストのように熱く人々にその教え(精神)を説くと同時に、その生き方を通して、身体全体で、あるいは存在そのものを通して、全身全霊を傾けたのでしょう。そうでなければ今日の明星の基礎は築けなかったはずです。なぜそれほどまでに日本人の教育に邁進したのでしょうか。それはすべての人々に対する愛にほかなりません。国境を越え、人種を越え、東洋の端までやってきて、命をかけて貫き通したその思いは、日本人にキリスト教の精神を知らせると言うミッション(使命)から来ています。
400年前に日本にキリスト教をもたらしたフランシスコ・ザビエルは、日本人が元来、教養も高く、ほかの人に対して優しい人たちである、と言っています。争いを好まず、穏やかな国民性を持つ日本人は、世界の人々から尊敬されています。しかし現代の日本では、第二次世界大戦後の自由主義が間違った方向に受け取られ、日本人の持つ良さも失われつつあります。現代日本の課題は沢山ありますが、根本精神において、修正する必要があるように思います。100年前に、明星の創立者たちが全身全霊を傾けて行った実践は、今尚私たち明星人に課せられた宿題です。明星の良さとは「優しさ」です。キリストの教え(精神)をふまえた明星教育の根幹は「優しさ」の追求であると思います。人間は一人ひとりかけがえのない存在です。優しさが無いと生きてはいけません。他の人を思いやる心を育てる学園でありたいと思います。
